
日記を振り返る12の質問:最近の出来事から自分を知る
目次
「今週は何もできなかった」。そう書いたあとで、家族の用事を引き受けた日や、途中まで進めた作業を思い出すことがあります。最初に浮かぶ一言だけでは、過ごした時間を言い表せないこともあるのでしょう。
日記の振り返りでは、最近の出来事を一つ選び、「何があったか」「どんな条件だったか」と問い直せます。ここにある12の質問は、その書き出しを助けるためにまとめたものです。効果が検証された心理的な訓練や治療ではなく、すべてに答える必要もありません。記録がない人も、今日思い出せることから始められます。
読み返す範囲と、やめるところを先に決める
一週間を区切りにすると扱いやすい場合もありますが、日曜に必ず振り返る決まりはありません。数日、一つの仕事、ひと月など、今の自分が無理なく見渡せる範囲を選びます。「この数件を読んだら終わる」「一つの問いに答えたら閉じる」と、終わりも先に決めておきましょう。
その期間の日記をいくつか選ぶときは、つらかった日だけでなく、何も特別なことがなかった日や、まずまず過ごせた日も候補に入れます。選んだ記録は生活の一部です。書かなかった日があり、書いていない出来事もあります。日記に話題が出てこないからといって、その出来事がなかったとは限らず、書かなかった理由も分かりません。毎日欠かさず続けることも条件ではありません。
日記がなければ、「今日、先日の出来事を思い出して書いた」と日付を添えて記します。予定表は日付を確かめる手がかりにはなっても、当時の気持ちや予想まで教えてくれるものではありません。いま思い出した内容を、当日に書いた記録のように扱わないことが大切です。
入力したメモでも構いません。使いやすく、あとから読み返せる方法を選んでください。落ち着いて書ける場所や保存先を考え、実名などの個人を特定できる情報が本当に必要かも確かめます。日記を誰かに見せる義務はありません。
まずは、一場面を丁寧に拾う
最初から自分の性格や生き方を結論づける必要はありません。以下の問いから、いま扱えそうなものを一つ選びます。短い答えのまま終えても、別の日に続きを書いても構いません。
1.このところの出来事で、一場面だけ残すなら何を選びますか。
いつ、どこで、何をしていたかに加え、一つ具体的な細部を記します。帰り道で見かけた花、食卓で交わした言葉など、大きな出来事でなくても十分です。理由を分析せず、覚えておきたい場面として残すことにも意味があります。
2.確かめられる出来事と、そこから自分が受け取った意味は何ですか。
「返事が翌日になった」と「軽く扱われた気がした」は、分けて書けます。後者の気持ちを否定するためではありません。見聞きしたことと、その時点での解釈を区別しておくためです。相手の意図は、自分の日記だけでは確かめられません。
3.大切にしたいことに取り組めたとき、難しかったとき、それぞれどんな条件でしたか。
作業の内容、時間帯、手伝ってくれる人、途中で入った用事、その日の気持ちを並べてみます。「やる気が足りなかった」で終わらせず、使えた時間や助けも含めて考えます。自分では変えられなかった条件も書いてよいのです。
4.まずまずうまくいったことを、何が支えていましたか。
自分の工夫だけでなく、使いやすい資料、誰かの手助け、偶然の余裕も候補になります。「感謝できること」を無理に探す問いではありません。うまくいった場面にも、その場を成り立たせた事情があったかを見ます。
残した文章は、あとから参照できる外部の記録になります。2016年にTrends in Cognitive Sciencesで発表された、ウォータールー大学のEvan F. Riskoとユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのSam J. Gilbertによる認知的オフローディング(cognitive offloading)の総説は、道具や行動を使って課題の認知的な負担を変える方法を扱っています。
ただし、この総説は今回の質問や週ごとの振り返りを検証したものではありません。日記で自己理解が正確になる、過去の経験をより正確に覚えられる、と示したわけでもありません。記録があることと、記憶が正しいことの違いは、日記と記憶の関係を考える際にも押さえておきたい点です。
繰り返しが見えたら、例外も探す
5.似たことが書かれているのは、具体的にどの日ですか。
該当する日付と文章を確かめ、「この期間の、選んだ記録ではこうだった」と範囲を限定します。何度か出てきた話題は、さらに考えるための問いです。「自分はいつもこうだ」という変わらない性格の証拠にはなりません。
6.その見立てに当てはまらない日はありますか。
例外の日は、作業、相手、支援、気分などに違いがなかったかを見ます。ほかの説明は成り立つか、何が分かれば今の見立てを変えるかも書いてみましょう。見立てに合う日だけを選んでいなかったか、記録のない日をどう扱っているかも点検します。
7.結果が出る前には何を予想し、結果が出たあとは何が分かりましたか。
当時の予想が書いてあれば、その文章と今分かっていることを並べます。書いていなければ「当時の予想は記録していない」と明記してください。「たぶんこう思っていたはず」という現在の推測を、過去の予想として作り足さないようにします。
結果を知ると、当時どう考えていたかの記憶や、「予測できたはずだ」という感覚が変わることがあります。ノースウェスタン大学のNeal J. Roeseとミネソタ大学のKathleen D. Vohsが2012年にPerspectives on Psychological Scienceへ発表した後知恵バイアス(hindsight bias)の総説は、この問題を整理した以前の基礎的な研究です。
元の予想を記録しておく理由を考える手がかりになりますが、日記でこの偏りがなくなると示した研究ではありません。当時の文章にも誤りや書き足りない部分はあり得ます。失敗を振り返って学ぶ際の日記の使い方でも、結果だけから過去を判断しない姿勢が必要です。
8.この状況にいた人を判断する前に、どんな事情を知っておきたいですか。
自分を第三者のように決めつける前に、時間、体調、役割、選べた手段など、記録にない条件を挙げます。ほかの人について考える場合も、動機を想像で埋めないでください。事情を確かめることは、傷つける行為を正当化することとは別です。
以前と解釈が変わったら、元の文章を残し、今日の日付で追記できます。新しい見方が必ず正しいとは限りません。二つの時点の考えを残すことで、何が変わったかを見比べられます。必要なら、日記全体を見せずに、適切な相手へ事実を確かめたり意見を聞いたりする方法もあります。
自分の選択と、周りに求めたいことを分ける
9.最近のどの選択に、自分が大切にしたいことが表れていましたか。
抽象的に「誠実な人になりたい」と書くより、「分からない点をそのままにせず質問した」など、一つの選択を挙げます。そのために諦めたことや、選択肢を狭めた事情も含めます。大切なことをいつでも自由に選べるわけではありません。
10.考え方を変えるだけでは足りず、助けや話し合いが必要なことは何ですか。
人手、情報、費用、役割の調整など、外から必要なものを書きます。不当な扱いや仕組みの問題は、個人の振り返りだけでは解決できません。変えられない状況まで本人の責任にしないことが前提です。
11.自分でできる小さな調整を一つ試すなら、何を変え、何を見ますか。
「生活を整える」より、「次の作業前に必要な資料をそろえ、途中で探したものを記録する」のように具体化します。無理なく試せる範囲にとどめ、結果が変わっても、その調整だけが原因だとは判断しません。試すこと自体も任意です。
12.今日は答えを出さず、そのまま残してよいことは何ですか。
分からない気持ち、まだ話せないこと、続きを考える余裕がないこともあります。問いを残す、思い出を保存する、休むと決める。それだけで今回の振り返りを終えて構いません。
自分を知るという目的も、性格に一つの名前をつけることに限りません。日記を通じた自己理解を考えるときは、選択とその条件の両方を見る余地を残しておきましょう。
記入例:「人前で話すのが苦手」と結論づける前に
ここからは架空の例です。地域の図書室で活動する直子さんが、打ち合わせについて書いた日記を読み返しました。最初の感想は「私は人前では何も言えない」でした。
- 8月3日:配布資料は集まりの直前に届いた。片付け当番を終えて着席し、提案について発言しなかった。
- 8月8日:説明が続くあいだに、話題が次へ移った。「自分の案はまだまとまっていない」と書いていた。
- 8月12日:事前に資料を読めた。少人数で書架の配置を相談し、入口付近の動線について提案した。
発言しなかった日があることは記録から分かります。でも、8月12日は「何も言えない」という見立てに当てはまりません。準備の時間、集まりの人数、担当していた作業にも違いがありました。話すこと自体の苦手さだけでなく、資料を読む余裕や話題の進め方が関係していた可能性も考えられます。
直子さんは「次の集まりでは、資料がそろう時期を担当者に相談する。読めたか、話したい点を書けたかを記録する」と追記しました。これは相談するという小さな選択であって、発言できるようになる保証ではありません。個人の日記は条件をそろえた実験ではなく、何が原因だったかを証明できません。参加しなかった日や、日記に書かなかった集まりもあるため、この三件が活動全体を代表するとも限りません。
振り返りの効果を、研究はどこまで確かめているか
振り返る文章を調べた研究はありますが、場面を分けて読む必要があります。インディアナ大学のValerie Dean O'Loughlinとテキサス工科大学のLauren Miller Griffithは、2020年にAnatomical Sciences Educationで、解剖学・放射線医学の事例に取り組む学生92人のオンラインの振り返り記録927件を分析した研究を報告しました。授業が進むにつれ、学生が自分の学習をどう記述したかの変化を扱っています。
これは授業の課題として振り返りを行った、特定の学習場面での研究です。私的な日記を週に一度見直す人を無作為に割り当てた試験ではなく、この12の問いで日常の学びが改善すると示すものでもありません。引用した研究から、最適な間隔、所要時間、読む件数、気づきを得るまでの日数は決められません。
考え続けることが、いつも役に立つとは限らない点も大切です。エクセター大学のEdward R. Watkinsが2008年にPsychological Bulletinへ発表した繰り返し考えることの総説は、この区別を考えるための以前の基礎的な研究です。考える内容やその肯定的・否定的な性質、本人と状況の条件、具体的に考えるか抽象的に考えるかを論じています。
ただし、「具体的な問いなら必ずよい」「なぜ、と聞くと必ず悪い」という結論ではありません。今回の質問で反すう(rumination)、つまり同じことを繰り返し考える状態を治療できるとも示していません。日記と考えすぎの関係では、書き続ける量だけでなく、書いているあいだの状態も確かめたいところです。
つらさが増したら、途中で閉じてよい
読み返すほど苦しくなる、同じ自己否定を繰り返す、と感じたら中断するか、問いや題材を変えてください。日記を閉じて普段の用事に戻る、信頼できる人に話すという選択もあります。つらい出来事を読み直したり、心の傷に関わる経験を書いたりする義務はありません。
この振り返りは治療ではなく、専門的なケアの代わりにはなりません。症状が続く、悪化する、生活に支障が出る場合は、資格を持つ専門家に相談してください。相談の目安を考える資料として、米国国立精神衛生研究所の心の不調と支援に関する案内も参照できます。
自分の安全を保てない、自分を傷つけるおそれがあるときは、今いる地域の緊急窓口や危機支援へ直ちに連絡してください。地域に応じた支援先はFind A Helplineでも探せます。必要な助けを受けることを、日記を書くために遅らせないでください。
次に使うための短い振り返り欄
以下を写して、書ける欄だけ埋めてみてください。初めてなら、一場面と「起きたこと/自分の解釈」だけでも始められます。
- 見直す期間、選んだ記録、今回の終わりの目安:
- 覚えておきたい一場面と細部:
- 起きたこと/そのときの解釈:
- 見立てに合わない例、分からない事情:
- 任意で試すことと確かめたい点、または必要な助け:
- 今日は答えを出さずに残すこと:
振り返りで残したいのは、自分への判定よりも、出来事とその条件を分けて考えた記録です。少し分かったことと、まだ分からないことが並んでいても構いません。次の行を空けたまま閉じる日があっても、それで十分です。